世間的に趣味世界の多様化が進んでいますが、鉄道趣味も例外ではないようです。
ネットを介してマニアックな情報が次々と収集・蓄積されてはまた広がっていく、
というような形で、これまで見向きもされなかったもの・理解が進んでいなかったものが
注目されるようになりました。
インターネットの特性として挙げられていた"集合知"の好例かもしれません。

今日お話しする"線路"についても、
基本的なことは知っていても詳しくは知らない・興味がないという
鉄道マニアが多かったのではないでしょうか。
しかし最近では、分岐器や軌道材料、線路構造物、保守用車などの鉄道施設について
目を向ける人も多くなってきたように感じます。

ということで、
今日はいつもの東急電車ではなく、
東急の線路を見てみたいと思います。

2018年5月某日 梶が谷にて
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梶が谷駅下り副本線は今はやりのラダーまくらぎが敷設されておりました。
汚れ具合から最近交換したわけではなさそうですが、かといって古いものでもなさそうです。
東急では本線上にもラダーまくらぎが採用されています。


ラダーまくらぎは従来のまくらぎと違い、まくらぎをレール長手方向に敷設した点が特徴です。
それまでレールに対し直角に敷設していたまくらぎですが、このような配置になったのは
まくらぎの役割を果たす上でレール長手方向に配置したほうが何かと都合が良いからなんですね。

まくらぎは列車荷重を均等に路盤へ伝える役割がありますが、
ラダーまくらぎの場合レール直下に並行してまくらぎがありますので、
単純に従来のものと比べ荷重分散面積を広くとれるメリットがあります。
また、従来のまくらぎ単体ではただの棒形状であったのに対し、
ラダーまくらぎは梯子状の構造を組むため剛性が向上しており、
結果的に列車荷重がより均一に路盤へと伝えられる点も見逃せません。
荷重が一点に集中するとその部分だけ砕石が削られて支持力を失い、軌道の高低狂いに繋がります。


2018年5月某日 梶が谷にて
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また、"軌間保持"の面で対策がとられている点も重要です。
軌間保持とはその名の通り、軌間(左右レールの内幅)を一定に保つ役割です。
レールとまくらぎは既定の軌間に設定後、犬釘や二重バネ等の締結装置で結ばれ、
列車からの横圧(車輪がレールの外側へ向かおうとする力)が加わっても
軌間が広がらないようになっています。
このとき締結装置がまくらぎとしっかり緊締されていないと、
急曲線区間などでは横圧に負けて締結装置が外れ、
レールがずれたり小返り(レールが傾くこと)を起こして軌間が広がってしまい、
最悪の場合脱輪します。

このようにまくらぎをレール長手方向に敷設すると、レール左右でまくらぎが分離していますので
軌間・通り狂いを引き起こしやすくなります。
その対策としてラダーまくらぎでは、左右のまくらぎを特殊な鋼管によってつなぐことで
軌間を一定に保つような仕組みになっています。
上の写真を見ると、左右のまくらぎをつなぐ鋼管が見えますね。
また、この構造ですと軌間の調整が難しいので
レールとまくらぎの間に”調整型タイプレート”とみられる分厚い鉄板が入っています。
多分タイプレートごと横方向に動くことで軌間が調整できるのではないでしょうか。

2018年5月某日 梶が谷にて
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梶が谷駅下り副本線の中央林間方を見ると、
PCまくらぎ、ラダーまくらぎ、合成まくらぎと続いていますね。
他にも梶が谷駅構内には振分分岐器や内方分岐器があったり、
保守基地や保線区が併設されていたりと、
東急の軌道関連の集積地となっているようです。