後姿というのは、正面から覗いた姿とは違ったイメージを与えてくれます。
古くは、浮世絵の一つである見返り美人図なんかもその効果を発揮しているといえそうです。
後姿をメインに捉え、ふと振り返った瞬間を切り取っています。
顔が見えるか見えないか、そして振り返る仕草やちらと覗き見える横顔にハッとする、
まさにその刹那を描ききっているのではないでしょうか。

まあ、私は浮世絵の専門家でもなければそちらの方面に明るいわけでもないので、
細かい考証に関して述べるつもりはありません。
しかし絵画と写真というのは兄弟みたいなもので、被写体や画全体から表現したい点を
いかにしてあぶりだすか、という本質はどちらも同じではないかと思います。
見返り美人も、意味もなくただ振り返っているわけではないようです。

ということで今日は、被写体である銀色電車の”後姿”に焦点をあててみます。

2012年3月某日 たまプラーザにて 東急8606F
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実は、上りホーム中央林間方先端から有名な構図での撮影に失敗し、
半ばやけくそ気味に後姿を収めたものです。
しかし、淡く差し込んだ暮れかけの光と浮かび上がった方向幕が印象的で、
結果オーライな写真となりました。

2012年2月某日 たまプラーザにて 東急8694F
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冬の夜明けを行く東急8694F。

2012年2月某日 溝の口にて 東急8616F
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ちょっと銀残しっぽいレタッチで。

2012年11月某日 たまプラーザにて 東急8606F
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上の8694Fと同様の構図。
被られましたが、8606Fのテールライトの光跡が対向の8500系のコルゲートに反射して、
昼間では撮れない美しさを見せてくれました。


こうして後姿を並べてみると、どれも寂寥感を漂わせていますね。
テールライトの赤く淡い光にはそうした効果があるのでしょうか。

鉄道写真の場合、普通撮影者側へ向かってくる列車に対してシャッターを切ります。
そのほうが構図が決めやすく、シャッターを切るタイミングも図りやすいためです。

しかし、こうしてみると後姿には先頭から撮るのとは違う印象の写真が撮れることがわかります。
杓子定規な編成写真だけではなく、いろんな角度から記録する癖を付けたいところ。
これは、昨今話題の”インスタ映え”や”フォトジェニック”な写真を目指すならなおさらでしょうね。