梅雨を通り越して気が動転したかのような豪雨に見舞われ、相変わらずコロナは収束するどころか増える一方で混沌を極める今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

本日は、東急8500系リニューアルの進捗報告第2弾でございます。


まず前回の様子。
TKK8500Renewal×3並び v2
前回までにあらかたリニューアルデザインはスケッチできていました。

今回は、前回保留となっていた細かい部分の修正とデハ8600以外の車種の製作です。


前回保留事項は以下の通り。
・裾ジャッキアップポイント追加
・前面渡り板上昇形状再現パーツ追加
・屋根板端部形状見直し
・屋根手すり形状見直し
・ATC受電器・乗務員扉ステップ・密着自連形状見直し
・床下機器設計見直し
・TS-807/815台車設計見直し
・車内表現パーツ新規設計
・スナップフィット機構組込

また、nano factoryが製造を依頼する、DMM.make様の3Dプリント素材であるアクリル樹脂の造形サービス終了に伴い、光造形機による内製化を目指し設計構想の大幅な変更を余儀なくされています。
これは弊社にとって大変な痛手ですが、光造形機の平滑性はアクリル樹脂インクジェット造形以上のものがあるため、うまくいけばより滑らかな表面をもつ美しいボディが手に入るはずです。

ただ、光造形はサポート材を溶かすことができないため、ユーザー自身の手によりサポート材を取り外さないといけないという手間があります。

このあたりも含め、これまでの設計方法を大幅に見直す必要があります。


とりあえず前回保留したディテール面の解説からどうぞ。


・裾ジャッキアップポイント追加
ジャッキアップポイントとは、8000系列のうち12次車非軽量車までに見られる車体裾部に取り付けられた四角い小さなパーツです。
文字通り、何らかの理由で車体をジャッキアップする際、ジャッキを掛ける部分となります。
13次車以降の軽量車では車体内側に折り込まれ、外から見えないよう処理されています。
M2c 8600-6アクリル v56
M2c 8600-6アクリル v56-2
裾に見える小さな長方形のいかにも後付け感満載の物体がジャッキアップポイントです。

現行品では鉄コレやGM板キットにディテールをあわせ、わざと省略していましたが、この期に及んで既製品に合わせる必要も無く、よりリアルで実車の特徴を踏まえたボディを目指すべく今回表現を追加しています。


・前面渡り板上昇形状再現パーツ追加
8500系の渡り板は今でこそ検査入場時くらいしか上げませんが、昔の写真を見ていると白Hゴム時代は上昇状態で運用に就いている写真が結構見受けられました。
M2c 8600-6アクリル v28
単純に渡り板を別パーツとして上昇・引き出しの両パターンを再現できればベストでしたが、いかんせん渡り板は薄いため、取付足の形状を考えて上昇形態の渡り板パーツを新たに用意しています。

8500watariita
ご覧のとおり、しっかりと差し込んで固定できるよう取付足・取付穴を斜めに配する苦肉の策ですが、GM完成品のような平行に差し込む形状と比べてうっかり取れてしまうようなことのないよう設計しています。


・屋根板端部形状見直し
屋根板端部形状というのは、ようはキャンバス屋根時代のキャンバス押え表現を再現したということです。
といっても、8000系列のキャンバス押えは途中から塗り屋根化したこともあって目立ちにくいため、ボディと屋根の間に少し隙間ができるよう設計することでキャンバス押えの後付け感を醸し出しています。
M2c 8600-6アクリル v56-3
妻側も側面側もボディと屋根の間に0.2mmの隙間があります。


・車内表現パーツ新規設計
車内表現は、GM床板パーツを組み込む場合は関係ありませんが、GMパーツとは別に新たに弊社設計床板をこしらえています。
3Dプリント・ナイロン製を想定して設計しており、先頭車は運客仕切りをそれらしくモールドしています。
M2c 8600-6アクリル v56-4

現在の設計では集電板を引き通すと同時に集電板を隠すよう逆L形の仕切りが床板中心を通っていますが、それを廃してより床板自体を薄板とし、集電板取付の際は別パーツで隠すような設計もアリかと思っています。


・スナップフィット機構組込
スナップフィット機構はもはや標準機能といっても過言ではないかもしれませんが、この機構を取り入れるために妻側と側面、屋根板の5面が干渉しないよう調整しています。
M2c 8600-6アクリル v56-5
M2c 8600-6アクリル v56-6
なおかつ継目が目立たないよう処理して、組みやすさと見た目の両立を図るよう設計にかなりの時間を費やしています。
それこそボディのディテールをこしらえるのと同等くらいの手間がかかるのです。

前面と側板の接合部
M2c 8600-6アクリル v56-8
M2c 8600-6アクリル v56-7

妻板と側板の接合部
M2c 8600-6アクリル v56-9
M2c 8600-6アクリル v56-10
妻板は継目が目立たぬよう側板と妻板の分割線を雨樋に沿って配しています。
また、前面と側板の継目処理は、妻板のように雨樋が無いため、今回初の試みとして接合部を斜めにカットし継目を目立たせぬよう気を配りましたが。果たして効果はあるのか……

・ATC受電器・乗務員扉ステップ・密着自連形状見直し
・床下機器設計見直し
・TS-807/815台車設計見直し
は、まだまだ手が回っておりません……💦
手を付け次第追記します。


デハ8500
M1c 8500-6アクリル v9-12
M1c 8500-6アクリル v9-13
M1c 8500-6アクリル v9-14
M1c 8500-6アクリル v8-2
床下機器は一昨年設計品の流用ですのでご容赦ください。
といってもこれでディテール的には十分ですが。

デハ8500はデハ8600ボディに比べ過電流灯が側面幕板に追加されています。
GM完成品では潔く省略されていましたが、弊社的には見過ごすわけにはいきません。

妻板はHゴム支持の妻窓に扉無の貫通部、そしてパンタ配管の組み合わせです。
デハ8700及びデハ8500軽量車ではパンタ側妻板に貫通扉が付くため、この表情はデハ8500非軽量車独自のものとなります。
⇒読者の方からコメント頂きました通り、非軽量車のデハ8500妻面は貫通扉が無いため、妻窓はHゴム押えではなくサッシ形状が適切でした。
製品版では修正いたします。


デハ8800
T_M2 8900_8800-6アクリル v1-2
T_M2 8900_8800-6アクリル v1
デハ8800は、デハ8600さえ設計できていればほぼ流用して設計が可能です。
また、床下機器を変えればサハ8900になります。


というわけで、最後にデハ8700を設計すれば大方9次車までの非軽量車ボディは設計完了です。

現在Form3の試作品を頼んでいるため、次回はその試作品の様子をご紹介しましょう。
この出来次第で今後の設計方針が決まりますので……(;゚Д゚)